【苔寺】境内いっぱいに広がる緑の苔の絨毯に包まれた西芳寺

【苔寺】とは、境内いっぱいに広がる緑の苔の絨毯に包まれた「西芳寺(さいほうじ)」のことです。京都府京都市西京区松尾にある臨済宗のお寺で、世界遺産に登録され、一般には「苔寺」として知られています。

西芳寺の庭園は、鎌倉時代から室町時代の初めの臨済宗のお坊さん・夢窓漱石によって設計され、特別名勝と史跡になっています。夢窓の設計した庭園は外にも京都市の世界遺産「天龍寺庭園」・国の名勝の岐阜県の「永保寺庭園」・神奈川県の「瑞泉寺庭園」などがあります。

元々西芳寺庭園は上段の枯山水と下段の池泉回遊式庭園の2形式を合わせたものでしたが、現在では上段は石組みが残るだけで、下段の苔の庭が広く苔寺として有名になっているのです。

苔の庭と言われるとおり、庭園に入ると通路を除く地面は全て苔に覆われていて、「緑の絨毯」というたとえがそのまま当てはまるような光景を目の当たりにします。しかし、この庭を作った頃は苔寺という構想は無く、庭園の環境によって自然に苔が育ち始めたのだということなのです。

庭園の中心となる「黄金池」が木立の中でその存在感を溢れさせ、その周囲と池の中の3つの小島(朝日ヶ島・夕日ヶ島・長島=霧島)もたくさんの苔で埋め尽くされている状況です。

かつては、池の周辺に「瑠璃殿」・「釣寂庵」・「湘南亭」・「潭北亭」・「貯清寮」・「邀月橋」・「合同船」といった建築物があったといいます。現在では「湘南亭」だけが残っており、その建屋と周囲の苔の絨毯とを合わせたたたずまいを堪能できます。

ここで見ることができる苔として具体的に上げられているものには、苔類の「ジャゴケ」、蘚類の「ハイゴケ」・「シラガゴケ」・「ホソバオキナゴケ」・「ミズゴケ」などがあります。通常ここに繁茂する苔の種類は、100種以上とも120種以上とも言われています。

少し古い調査データ(平成12年)では、苔類で「チャボマツバウロコゴケ」・「ヤマトムチゴケ」・「チャボホラゴケモドキ」など60種、蘚類で「オオミズゴケ」・「イクビゴケ」・「ヒメタチゴケ」など104種、ツノゴケ類で「ニワツノゴケ」の1種が確認されていました。この時点では、165種もの苔が繁茂していたのです。

西芳寺へは、阪急電鉄だと嵐山線松尾大社駅から歩いて17分くらい、JR京都駅か京阪三条駅から京都バスを利用すると、バス停「苔寺・すず虫寺」からすぐに行くことができます。車を利用する場合は、お寺から徒歩10分位の嵐山線沿線に「苔寺観光駐車場」があります。

苔好きならぜひとも一度は見てみたい苔寺ですが、少々難しいところもあります。”拝観”するには往復はがきによる希望日を予約が必要で、時間を指定することはできません。

また、時間が無ければ省略すること可能ですが、写経などの宗教行事に参加しなければ庭園の見学はできず、写経冥加料として三千円が必要という点もちょっと痛いところでしょう。

見頃は何と言っても紅葉の時期で、秋に行くのが最高です。それに、写経などで時間調整されているためか、人気の庭園であってもそれほど混雑していないということを話す訪問者もいるのです。