【獅子ヶ鼻湿原】不思議な苔「鳥海マリモ」が密生する苔のスポット

【獅子ヶ鼻湿原】とは、「日本蘚苔類学会」が「日本の貴重なコケの森」に選定した苔のスポットです。場所は、秋田県にかほ市象潟町中島台で、不思議な苔「鳥海マリモ」が密生しています。

ここへのアクセスはかなり大変で、最寄りのJR東日本羽越本線の象潟(きさかた)駅からは15キロほどあり、歩くと2時間半以上、車でも30分近くはかかってしまいます。公共の交通機関としては、完全予約制の観光乗合タクシーがあるくらいです。

観光乗合タクシーは2名以上の予約で一人4千円、象潟駅から8時台・11時台・13時台の3便があります。運行時間が限定されているため、「合資会社象潟合同タクシー」への確認したほうが間違いはないでしょう。

高速で東京方面から行く場合は、東北道の北上ジャンクションで秋田道に入り、秋田道の河辺ジャンクションから日本海東北自動車道に入り、象潟インターチェンジが最寄りの出口となっています。この象潟ICは象潟駅から獅子ヶ鼻湿原へのルートの途中になっていて、ここからは車で20分ちょっとで行けるのです。

このスポットは「鳥海山獅子ヶ鼻湿原植物群落及び新山溶岩流末端崖と湧水群」として国の天然記念物にも指定されていて、苔の森の湿原の他、「森の巨人たち100選」に選ばれた幹回り日本一の奇形ブナ「あがりこ大王」を見ることもできます。

ここは「中島台レクリエーションの森」という観光地となっていて、県道58号沿いから入った散策コースが広がっているのです。管理棟を過ぎた二股の道(ひとつは10分、もうひとつは15分)を歩いて行くと、再び吊橋の手前で合流します。

吊橋を渡り18分歩くと道は3つに分かれ、左の道を10分行けば「あがりこ大王」、真ん中の道を行くと途中に湧水(出つぼ)があり10分で水路の外れ、ここから14分ほどの左手がブナの原生林となっています。ここから10分ほど戻れば岩場に辿り着き、この岩場へは3分岐点の右の道を15分歩いても行き着けます。

右の分岐道から岩場までの左手に「鳥海マリモ」の群生地があり、この一円が獅子ヶ鼻湿原となっているのです。この森の入り口付近にある売店には、湿原のガイドマップが置いておりますので、ぜひともそれを参考に散策してみてください。

水路や湧水池の中を覗くと、「鳥海マリモ」と名付けられた、稀参種のハンデルソロイゴケやヒラウロコゴケなどの1m以上にもなる塊が生息しているのです。他にも、ニセオオミズゴケなどのミズゴケ類4種、普通は標高千m以上に生育するシモフリゴケやカギハイゴケなどが見られ、学術的にもとても貴重なものです。

中でもヒラウロコゴケという種は、日本ではここ以外には八ヶ岳だけに、海外でもスペイン・イタリア・トルコなどの地中海沿岸だけに生息する、本当に貴重な苔だといいます。この「鳥海マリモ」の不思議な姿は、50年から百年という長い期間を経て形作られているのです。

「あがりこ大王」は推定樹齢3百年以上、幹回りが7.62mと周辺の木々を圧倒する威容を漂わせています。