【ハイゴケ】自然の中の黄緑色のマット・園芸用の便利アイテム

【ハイゴケ】とは、マゴケ植物門 マゴケ綱 ハイゴケ目 ハイゴケ科 ハイゴケ属に分類される、コケ植物の蘚類の苔です。自然の中で黄緑色のマットを形成するので、園芸用の便利アイテムとして重宝されています。

漢字では「這苔」となり、その這うように平らな群落を作っていく匍匐性の性質をよく表しています。日本全国で日当たりの良い道端・岩の上・土手・山地・樹幹の下部など、湿度のある所であれば空気のよどみさえなければよく育ちます。

海外では、シベリア・東アジア・東南アジア・ハワイなどの多く分布し、良く使われる園芸での名称を含め、「カバー・モス」・「ヤネゴケ」・「屋根苔」・「苔玉苔」など多くの呼び名を持っています。

園芸においては、苔庭・苔盆栽・苔玉・苔テラリウムとその利用範囲は非常に幅広く、生きたままで販売される苔としては最も手に入り易く価格もお手頃なのです。乾燥に強いため半乾燥状態で販売されるものもあり、完全乾燥のうえ着色した「山ゴケ」という商品は、リースやバスケットなどの装飾用としても販売されています。

茎葉の上側が鎌の形をしていて、基部はハート形、蒴(胞子嚢)は3~5センチで湾曲して水平につきます。また、葉の基部にコウモリの翼に似た「翼細胞(よくさいぼう)」という細胞群があるのが他の苔との見分けになる特徴となっています。

植物の中には「アレロパシー(他感作用)」という、他の植物の生長を抑える物質を放出するなどの作用を起こすものがあります。例えば、セイタカワダチソウの根から出るシスデヒドロマトリカリアエステル、クルミの葉や根から出るジュグロン、桜の葉から出るクマリンなどという物質がその作用を起こします。

他にも松・蕎麦・ヨモギ・アスパラガス・彼岸花・レモンなど身近な植物でこのアレロパシーを行なうことが知られていますが、なんとハイゴケにもこの作用が認められ、研究によって他の植物の生長を抑制する物質モミラクトンが含まれているのがわかったのです。

つまり、ハイゴケには雑草の発生を抑えて生育していく能力があり、他の苔よりも比較的管理が容易であるということなのです。そのため、ハイゴケが他の苔や芝生などまで増えていった時には、それらが駆逐されてしまわないように、ハイゴケを取り除く必要があります。

苔は自分で育てるのも良いですが、じっくりと名所で鑑賞もしてみたいものです。苔の名所と言えば京都、その中でもハイゴケの名所としては、「大徳寺・高桐院」・「高台寺・圓徳院」・「曼珠院」などがあげられます。

「大徳寺・高桐院」は、京都市北区紫野にある臨済宗のお寺です。ここのハイゴケは、細川忠興・ガラシャ夫妻の墓である千利休の愛した灯篭の裾を美しく覆って、夫妻の安寧を守っているようです。

「高台寺・圓徳院」は、京都市東山区にある臨済宗のお寺の塔頭のひとつで、豊臣秀吉の正室ねねが晩年を過ごしました。ここのハイゴケは、石畳との絶妙なコラボレーションが美しい光景を見せてくれます。

「曼珠院」は京都市左京区一乗寺にある天台宗のお寺で、皇族が住職を務める竹内門跡となっています。ここのハイゴケは、正門付近の土手を美しく飾り、紅葉の時期には苔の緑が紅葉の彩りとの共演を見せてくれます。